本の感想,  自伝

イーロン・マスク 破壊者か創造神か

2019年6月19~26日

 

「イーロン・マスク」

〜破壊者か創造神か〜

 

竹内一正

 

 


 

「わが社が潰れても、構わない」

こんな変なことを言う男がいる。

 

そう。イーロン・マスクである。

 

私財をを投げ打って、

宇宙ロケット、電気自動車、太陽光発電の3つの分野で

革命を起こそうとしている。

 

「いずれ人類は地球以外の惑星に住まなくてはいけなくなる」

イーロンはそう確信し、

人類を火星に移住させるための巨大ロケットを

劇的に低いコストで開発しようと

2002年に宇宙ロケットベンチャー

「スペースX」を創業した。

 

元々この地球外惑星移住計画の根本にあるものが、

CO2の増加による地球温暖化だ。

しかし火星ロケットが完成するまでの間も、

CO2が増え温暖化が加速していく。

 

イーロンはそれにもブレーキをかけるべく、

ガソリン車に代わり、

電気自動車(EV)を普及させようと設立したのが

「テスラ・モーターズ」だ。

そんなテスラが生んだ高級スポーツカー

「ロードスター」は、

カッコイイデザインとポルシェを超える走行性能で

世間の話題をかっさらった。

 

さらに高速充電ができるスーパーチャージャー・ステーションを全米に展開。

さらにテスラ車に使用されているリチウム電池を大量に生産する

世界最大のリチウムイオン電池工場

「ギガファクトリー」をも作り上げた。

 

そして2014年、

なんとこのリチウムイオン電池技術の特許を無償公開すると発表した。

 

この男、

テスラの株価を上げるために人生を賭けているのではない。

たとえテスラ社が潰れても、

EVが普及して地球温暖化の速度が少しでも遅くなれば構わないと公言する。

 

20世紀にはこんな経営者は存在しなかった。

 

全財産を投げ打ち大きなリスクを取り、

やることが桁違いにデカいイーロンだが、

すでにご察しの通り、目的は金儲けではない。

 

「人類と地球を助けるため」だ。

 

億万長者にしてバツ2で独身、

5人の男の子のパパであり、

業界のルールを無視し、

常識を打ち壊す異端の経営者イーロン・マスク 。

 

そんな彼についてもう少し詳しく見ていこうと思う。

 

1971年、南アフリカ共和国の首都プレトリアの裕福な白人家庭で生まれたイーロンは

幼い時から本が大好きだった。

兄弟たちがおもちゃに夢中になるのをよそに、

「ロード・オブ・ザ・リング」や「銀河帝国の興亡」に熱中し、

8歳でブリタニカ百科事典を全巻読破した。

小学校の高学年になると10時間も本を読みふけることさえあった。

 

その一方で普通の子供と同じ様に、

イーロンも「暗闇」が怖かった。

ところがある時、

「暗闇とはフォトン(光子)の欠如によるものだ」と知ってからは、

暗闇が怖くなることはなくなったという。

幼い頃から不思議な素養と感性を持っていた。

 

本の虫だったイーロンは1年早く小学校へ入学するが、

考えだすと周りのことが目に入らなくなる困った性格のため、

友人は少なく、クラスではいじめを受けることもあった。

だが、学校を休むことは父親が許さなかった。

 

イーロンの父はオランダとイギリスの血を引く電気エンジニアで、

母はカナダ生まれでモデルの経験もある優秀な栄養士だった。

知識欲が旺盛なイーロンは、

疑問があれば父親によく質問をぶつけた。

父親は教師のような存在で、しつけは厳しかった。

 

10歳の時にイーロンは念願のパソコン、

コモドール社製「VIC-20」を手に入れた。

するとプログラム言語「BASIC」の説明書が同梱されていて、

それは6ヶ月で習得する内容だったが、

イーロンは三日三晩でマスターしてしまう。

ただしこの時、「パソコンなんて大して役に立たない」と父は忠告していた。

 

イーロンは12歳になると自作でビデオゲームソフトを組み上げ

「ブラスター」と命名。

エイリアンの宇宙船を破壊するゲームで、

南アフリカのパソコン雑誌にソースコードが掲載された。

PCとのこの出会いがのちにインターネットで大成功を摑む一歩となる。

 

ところで、

イーロンが8歳の時に両親は離婚し、

イーロンは弟、妹とともに母親と暮らすことになった。

母のメイは外に出てバイタリティあふれる栄養士として働き、

3人の子供を見事に育てていった。

 

当時の南アフリカはアパルトヘイト(人種隔離政策)が実施されていたりと国内が安定しておらず、

イーロンはそんな自国に対し問題意識を持っていた。

そして幼い頃からアメリカに憧れを抱いていたイーロンは

17歳になると母の親戚が住むカナダに1人で渡った。

そこでは親戚の家々で世話になったり、時に1日1ドル以下の貧しい暮らしも体験した。

農場で働き肉体労働で苦労し、まともな食事を取れないときは

格安のオレンジを大量に買い込んで乗り切った日々もあったが、

これらの経験は自己成長には大いに役立った。

 

1995年、マイクロソフト社がウィンドウズ95を発売したのと時を同じくして

24歳になったイーロンはシリコンバレーの中心スタンフォード大学の大学院に入学する。

周りはインターネットブームに沸いていた。

若者たちは第二のビル・ゲイツを目指し、

アメリカンドリームを追いかけ、

新会社を次々と興していた。

当時スタンフォード大学にいたサーゲイ・ブリンとラリー・ペイジがグーグル社を作るのは

1998年のことである。

 

そんな熱気の炉心に足を踏み入れてしまったイーロンが、

学業に貴重な青春をかけるより、

起業してビジネスにエネルギーを向けるべきだと決心したのは

当然のことだったかもしれない。

 

応用物理学と材料工学を学ぶためにせっかく入ったスタンフォード大学院をたった2日で辞めると、

弟とともにオンライン・コンテンツの出版ソフト制作会社「Zip2」を創業。

そして、自分の可能性に向かって走り出したのであった。

 

ちなみにイーロンは24歳で作ったこのソフト制作会社「Zip2」を、

PC界で急成長し業界の旗手となっていたコンパック社に3億ドル(約300億円)で売却し、

これにより約2200万ドルを手に入れ億万長者の仲間入りをした。

そして次にインターネットの決済サービスを提供する「Xドットコム」という会社を創業した。

 

さて、ここまでざっとイーロンが実業家としての道を踏み出すまでの道のりを紹介してきた。

 

ここからイーロンは宇宙産業、EVの道へと突き進む。

 

宇宙産業について少し話すと、

当時宇宙産業なんてものは民間がやるものではなく、

国家が取り組むというような風潮があった。

これには莫大な費用が発生することが理由の一つとして挙げられる。

 

そんな中イーロンは当時NASAがロケットの開発に1億5千万ドル(約150億円)も要していたコストを

10分の1、

さらにロケットの再利用が実現すれば100分の1にまでするとぶちあげたのだ。

宇宙ロケット史上、類を見ない無謀な挑戦にイーロンは挑んでいく。

 

そもそもなぜイーロンがこのような無謀とも言える目標を掲げることができたのかというと、

そこには彼の最大の武器ともいえる、物理学的思考があった。

物理学では、モノマネ(アナロジー)でなく、

”原理”から思考を展開する。

 

しかし、我々の日常生活や仕事では、

無意識にアナロジーを実行している。

例えば、周りの大人や先輩たちがやっているやり方を見て学び、

マネをし、さらにもう少し上手に効果的やれるようになっていく。

子供の成長などはその典型例だ。

 

ところが、全く新しいことに挑戦する場合は、

アナロジーでは役に立たない。

例えば、真空管は、かつて電気製品のコア技術だった。

しかし、先行他社の真空管を真似てどれだけ突き詰めても、

次世代技術の”トランジスター”を発明することはできなかった。

根本原理が異なるからだ。

 

そのため、フィリップス社など大手真空管メーカーは

トランジスター事業に転換するのが大きく遅れた。

過去に例のない新しいものを生み出す場合は、

原理に立ち返って物事を見つめ直す姿勢が最も重要であることを

イーロンは分かっていた。

 

ロケット開発を目指したイーロンの最初の一歩は、

「ロケットの材質は何からできているか?」という根本的な疑問から始まった。

答えは、航空宇宙用のアルミ合金であり、

さらにチタンや銅、

そして炭素繊維である。

 

次に、「これらの市場価格はどのくらいか?」

たどり着いた答えは、

ロケットの材料コストは開発全体のコストのたった2%だということ。

この値は他の機械製品と比べても比べ物にならないほど低い数値で、

例えばテスラ社の自動車なら20〜25%、

パソコンに至っては90%が業界の常識である。

このようにしてイーロンはロケットのコストをもっと下げることができるという結論を導き出した。

 

イーロンという男の凄さをもう少し説明しよう。

イーロンや多くの技術者の準備、莫大な費用、たくさんの期待、

それらを一心に背負ったロケット「ファルコン1」の打ち上げが失敗した時のエピソードだ。

彼は周りの誰もが意気消沈している中、、、

「宇宙ロケットは間違いなく極度にストレスの高い事業だ。

しかし私は今回の結果に失望などしていない。

それどころか、とてもハッピーだ」

と言い切ったのだ。

この楽観主義こそが未開の宇宙空間挑戦への原動力だ。

 

またさらにファルコン9が爆発した際にも、

落ち込むスペースXのメンバーに対しイーロンは、

「ロケット再利用への偉大な一歩を刻んだ当社のメンバーたちを、

私はこの上もなく誇りに思う。

君たちは素晴らしい」

と讃え、再び沈む魂に点火した。

 

夢には一つの習性がある。

フォローの風に乗るとドンドン膨らむが、一度、逆風に遭うとあっさりとしぼんでしまう。

この習性をよく覚えておかないと、夢は手に入らない。

 

常識破りの猛烈な逆風だからこそ、

イーロンは非常識の度量で立ち向かった。

さらに驚くのは、この時のイーロンの眼はただファルコン1にだけ向いているのではなかった点だった。

なんとこのファルコン1の打ち上げが失敗したというのに、

それの10倍以上の軌道投入能力を持ち、

総離陸推力は15倍を超える大型ロケット「ファルコン9」も並行して設計開発を進行させていたのだ。

これは本当に常識では考えられない。

第1ステップのファルコン1さえまともに飛べないのに、

技術的にもっと困難なファルコン9や宇宙船ドラゴンの開発設計にまで

手を付けるとは、、、。

失敗を避けて、石橋を叩いて渡る日本人の感覚ではついていけないと諦めていている場合ではない!

 

彼の経営者としての優秀さの一つはここにある。

目先の問題に全力を傾けつつも、

将来に向かってのエネルギー配分ができる経営者だ。

経済学者のピーター・ドラッガーは、リーダーの果たすべき役割は

「直ちに必要とされているものと、遠い将来に必要とされるものを調和させていくこと」

と説いたが、

まさにその通りである。

 

またテスラ社に対する市場からの心配の声が上がった際には

それをなだめるように

「テスラ社の資金問題を気にする必要はない」

とイーロンは楽観主義で染め抜いた旗を精一杯振った。

それでも不安の波は押し寄せてきた。

すると今度は、

「たとえもし、すべての投資家が見捨てても、私がテスラを支える」

と堂々と言い切った。

これには世界中が驚いた。

 

ここまで断言できる経営者が世の中にどれだけいるだろうか。

アメリカの自動車業界を向こうに回して、

決して諦めないイーロンの姿勢は、

神がかり的でさえあった。

 

またこれは非常に短い補足だが、

イーロンは交渉やプレゼンといったアピールがとても上手である。

このように彼の型破りなところは

ロケットやEVの詳細開発に入り込む一方で、

NASAから巨額の開発補助金を引き出すという全く別次元の才能を発揮している点にある。

理系の頭に、文系の交渉力を兼ね備えたCEOだ。

しかも、両方とも超高度なレベルが要求された。

 

ここまでイーロンの素晴らしいところを紹介してきたが、

次は気分転換も兼ねて彼のキツイエピソードを紹介しよう。

 

常識を次々と打ち破るイーロンだが、

この男、聖人君主などではないし、

万人から愛される心優しき常識人でもない。

 

設計の細部にこだわり、現場に容赦なく口を出す嫌な上司だ。

部下の手柄でも自分がすべてやったようにマスコミに語るし、

無理な日程を平然と公表する。

週に100時間も働く仕事中毒で、

部下への要求は高く、厳しく、妥協しない。

彼と意見が合わずにやめていく部下も少なくない。

 

イーロン・マスクは正真正銘の、

そして最強のワンマン経営者だ。

 

しかし、もし彼が組織の調和を重んじ、

一人一人の部下の意見を吸い上げる心優しき経営者だったらどうだろう。

スペースXもテスラもとっくに倒産していたに違いない。

 

一人の社員が妻の出産に立ち会うため大切なイベントを欠席した時のことだ。

そのことを知ったイーロンは

「本当にがっかりした。私たちは、歴史を変えようとしているのだ。

やるのかやらないのか。はっきりしろ」

ときついメールを送りつけたほどだった。

 

しかし、ワンマンだからこそ常識の壁を破り、

短期間で歴史を塗り替える偉業を実現できたのだ。

 

 

だいぶ長くなってきてしまったが、

私は本書で彼のことをよりたくさん知ることができ、

自分の中にもフツフツと動き出す”何か”があった。

 

彼には共感するところもあれば、

ただただすごいなと感心するところ、

そしてそれはちょっと違うんじゃないか、

などなど多くを感じたが、

これから訪れる素晴らしき未来のために、

自分の成長のために、

吸収するところはぎゅ〜っと吸収し、

自分には不要な部分は捨てるなど、

ゆっくりと選別していきたい。

 

 


 

♦︎アクションプラン

 

・今やらなければならないこと、遠い将来に必要になるであろうこと、

このことを自分の描く方向性と照らし合わせつつ、もう一度よく考え、やることを決める!!

 

・リーダーであれば、どんな時でも前を向き続け、先頭に立ってメンバーを鼓舞し続ける。

 

・絶対に諦めない。3度失敗しても、4度失敗しても、絶対に諦めない。

 

・大きなリスクにビビらない

 

・聖人君主になるかはよく考える

(相手の気持ちは大事、でも私たちの未来において本当に大切なことは?を考える)

 

・”原理”を追求する

 

 

 

最後まで読んでくれてありがとう。

 

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